痛みのない身体を作ることが子宝に恵まれる基本です。女性不妊に対する漢方薬(婦人科三大処方)

―不妊症の6つの原因(表1)のうち、

夫婦生活の面で女性側の因子が原因の場合

例えば女性側が、生理痛がひどく、そこから慢性的な腹痛や腰痛に至った影響で夫婦生活が営みづらくて妊娠に至らないという場合があります。

性交痛がつらいという場合もあります。

こういった患者さんの場合、体内の水のバランスが崩れた水毒に加え、血虚(貧血傾向・局所的貧血を含む)、瘀血(「おけつ」と読みます。

血液の新陳代謝の悪化・局所的に血液の流れが悪くなってしまう傾向)がある場合が多く、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や人参当芍散を中心にした処方を使うと次第に症状が改善していくことが予想できます。

その結果、腰痛や腹痛や性交痛などが緩和されたことで夫婦生活が復活して自然妊娠に至ったケースが多くあります。


当帰芍薬散は血を補う当帰、血の巡りをよくする川きゅう、芍薬(しゃくやく)、水の巡りをよくする茯苓(ぶくりょう)、白朮(びゃくじゅつ)、沢瀉(たくしゃ)という生薬で構成され、血虚と水毒に対してよく用いる処方です。

古典書『金匱要略(きんきようりゃく)』では妊娠に関係する婦人の腹痛に使う薬と記載され、妊娠中の母体や胎児に好影響を与える安胎薬として妊娠中も安心して使える薬です。

さらに、胃腸の働きが弱い方の場合は、そこに朝鮮人参を加えた人参当芍散の方が、服用後の胃の調子が悪くならない場合が多いので、患者さんに喜ばれるケースが多くあります。


この当帰芍薬散に加え、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)加味逍遙散(かみしょうようさん)の3種類が婦人科領域でよく使われる通称・婦人科三大処方と呼ばれる漢方薬です。

不妊治療を目的としている女性では、こうした漢方薬などで常日頃悩んでいる症状を改善させることで自然妊娠に至るケースは少なくないと考えています。

目次

―桂枝茯苓丸や加味逍遙散は以下のような症状に処方されます

 桂枝茯苓丸は子宮内膜症や子宮筋腫などによく使われますが、漢方ではこれらの状態を瘀血と見なします。

桂枝茯苓丸は気の循環異常である「気逆」に対して気を降ろして改善する作用のある生薬の桂枝、水の巡りをよくする生薬の茯苓、血の巡りをよくする桃仁(とうじん)、牡丹皮、芍薬という生薬が含まれ、当帰芍薬散に比べると水の巡りを改善する生薬の種類が少ない反面、血の巡りをよくする生薬は数多く含まれています。


なお『金匱要略』では桂枝茯苓丸の適応について「其の癥(ちょう)を下すべし」と記述されています。

「癥」とは、以前からお腹の中にあるよくない塊というものを意味しています。

その点からまさに子宮筋腫などは癥ともいえるわけです。


また、桂枝茯苓丸は別名で催生湯(さいせいとう)といわれます。

例えば予定日を過ぎても出産に至らない妊婦に処方し、子宮を収縮させて出産を促す、文字通り生まれることを催す使い方もあります。

また、出産や流産のあとに、胎盤や絨毛の一部が子宮内に残存している状態に処方することもあります。

そのため妊娠判明後は基本的に服用を中止すべき薬です。妊娠検査薬は受精から2週間で陽性になるため、妊娠反応が確認された段階で服用中止すればよいでしょう。


加味逍遙散は当帰芍薬散、桂枝茯苓丸と比べ、柴胡、生姜(しょうきょう)、薄荷(はっか)、甘草(かんぞう)という気に関する生薬が多く含まれ、血に対する生薬の当帰、芍薬、山梔子(さんしし)、牡丹皮、水に対する茯苓、蒼朮(そうじゅつ)という生薬も入っており、女性の多様な不定愁訴によく処方します。

特に月経前(高温期)に体調が崩れる方には効果的です。

また、子宝とは直接関係ありませんが、更年期のホットフラッシュなどの辛い症状を改善することもできます。

現在、5組~6組に1組は、不妊に関するお悩みを持っているといわれます。

西洋医学的な治療に入る前に、腹痛(生理痛)・頭痛・腰痛・性交痛などの痛みがお悩みの方は、その痛みを改善しておくことが、子宝を授かることに直接的に関係しますので、漢方で基礎的な体調を整えておかれることをお薦めます。

人工授精や体外受精を選択される場合も、基礎の体調改善をしておくことで、妊娠の確率を上げることができます。

また、卵子の質を上げるための漢方治療もあります。

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